噛みつきと警戒から抜け出せない夜
ノーリアクションの徹底
ケージを整え、巣袋を吊るした夜。
ミミとエルを迎えた瞬間から、部屋の空気はあまり穏やかではなかった。
とくにエルの警戒心は強く、手を差し出すたびに「じこじこ」と鳴き、何度も噛みつかれた。
小さな歯でも鋭く、血が滲むこともある。
それでも、驚いて手を引けば「噛めば追い払える」と覚えられてしまう。
だからこそ、ノーリアクションを徹底した。
我慢の先にある信頼
ただ静かに耐える夜が続き、心のどこかで「このまま懐かないかもしれない」という不安も生まれる。
けれど、諦めた瞬間にすべてが遠のく気がした。
**信頼は“我慢の先”にある。**そう自分に言い聞かせた。
においで伝える安心という小さな試み
Tシャツを使った“におい学習”
触れられない日が続く中で、私は“におい”に頼るようになった。
一日着ていたTシャツを洗わず、巣袋にそっと入れる。
手を入れられない日も、Tシャツが代わりに私の存在を伝えてくれる。
信頼は接触より認識から
「このにおい=安全」と覚えてもらうために、できる限り同じ香りを保った。
ミミは少しずつ手の甲に落ち着くようになったが、エルは依然として逃げる。
焦るほどに距離が開くのを感じ、ただ静かに見守るしかない日も多い。
それでも続ける。信頼は“接触”ではなく、“認識”から始まる。
清掃とにおい管理で保つ“人間の責任”
毎朝のルーティンで環境を安定させる
毎朝、前夜の餌を回収し、水を替え、ケージや止まり木、排泄トレイを掃除する。
フクロモモンガの飼い方では、衛生管理が最も大切だと痛感する。
清潔さは健康だけでなく、においによるストレスを防ぐ。
強いにおいが残れば、彼女たちは不安になる。
AIで支える習慣化
だから私は毎朝決まった時間に作業を行うようにした。
そのリズムを保つために、AI学習で得たスキルを活かし、
**Google Apps Scriptで「19時給餌リマインドメール」**を設定。
忙しい日でもAIが声をかけてくれる。
生活と学びが繋がり、習慣を支える仕組みになった。
信頼を得るには、まず人間側の安定が必要。
個性の壁と、心の距離
性格の違いを観察する
ミミとエルの性格は正反対。
ミミは人懐っこく、指先を嗅いでからゆっくりと近づいてくる。
一方のエルは臆病で、人影が動くだけで巣袋に潜り込む。
“待つ”ことも信頼の一部
人間と同じで、モモンガにも「触れたい日」と「隠れたい日」がある。
私はその日の空気を読むように、距離感を調整した。
触れない日も、ただ声をかけて存在を伝える。
逃げるエルを追いかけないことが、逆に信頼を積む行為になる。
諦めずに「待つ」ことの意味を、ようやく理解し始めた。
希望ではなく“継続”という答え
小さな変化を信じる
二週間経っても、懐く気配はまだ薄い。
それでも、エルの噛み方がほんの少しだけ優しくなった気がする。
その小さな変化に、報われるような気持ちが湧いた。
共に慣れていくための時間
フクロモモンガの飼い方には、明確な正解はない。
においを覚えさせ、清潔を保ち、同じ行動を繰り返す。
その単調な積み重ねの中で、少しずつ彼女たちが私を「害のない存在」として受け入れてくれる。
AIのリマインドが鳴るたびに、今日もまた餌を用意し、静かなケージを覗き込む。
懐かせるためではなく、共に慣れていくための時間。
それが、今の私にできる最善の努力だった。



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