ここまで私は、月少コストで走るAI運用やDifyを最小セットで動かす方法を書いてきた。けれど本当に伝えたいのは「その学びを現場でどう使うか」だ。
アスベスト除去に携わって4年。人手不足と言われるこの業界で、実際に足りていないのは「教育を受けた社会保険加入の人材」だ。誰でもよいわけではないから、大規模案件を受けるにも、教育と体制づくりがネックになる。
2025年8月、私は現場直施工から、下請けに卸して管理する形(施工管理)へ舵を切った。同時にAI学習を本格化したのは、「人を増やせない前提で、仕組みで強くなる」ため。この記事は、その考え方と工程写真チェックボットという具体策のメモである。
現状整理:人手不足の正体は「教育済み人材の不足」
- 多くの現場が社会保険必須、かつ安全教育/資格が前提。
- アルバイトを気軽に採れないため、即戦力の確保が難しい。
- 人がいないと大きな現場を受注できない→収益の頭打ち。
- 赤字現場も発生しうる。続くと事業の持久力が削られる。
「人手不足」とひと括りにされるが、実際に足りないのは**“要件を満たす人”**。
ここを誤解したままの対策は、たいてい現場で空回りする。
方針転換:施工管理への移行とAI学習の理由
- 2025年8月、直施工→施工管理へ移行。
- 目的は「上位会社の信頼」と「下請けさんの負担軽減」を両立する仕組み化。
- 現場作業そのものにAIを入れるのは難しいが、管理・確認・報告には相性が良い。
- だからこそ、まず事務/報告/チェックの工程からAIを当てる。
具体策:工程写真チェックボットの構想
ねらい:撮り忘れ・貼り忘れ・命名ブレで後工程が滞る“ロス”を潰す。
最低要件
- 必須ショットの台帳化(現場タイプ別テンプレ)
- スマホからアップすると自動リネーム/自動分類
- 不足ショットを即通知(チャット連携)
- 日報・報告書へ半自動で差し込む
これで変わること
- 監督は「足りない」をその場で知れる。
- 下請けさんは何を撮れば合格かがブレない。
- 上位会社への初回提出の手戻りが激減する。
重要なのは“高性能”よりも、現場が迷わない運用の型。
まずはテンプレと命名規則だけ決め、動く最小から始める。
AIの限界と可能性:置き換えではなく“教育と確認の節約”
- 建設業は安全/法令/帳票の要件が厳しく、AIで人を置き換える発想は不適合。
- ただし、教育コストの削減(要点要約・クイズ化)と確認工数の削減(自動チェック)は効く。
- 教育済み人材の希少さを、仕組みの再現性で補うのが現実解。
運用プラン:小さく始めて、確実に積む
- テンプレの定義:現場種別ごとに「必須ショット一覧」を1枚で作る。
- 命名規則の固定:
日付_現場_工程_企業名を徹底。 - 一次運用:人力で台帳照合(まずは手で回ることを確認)。
- 半自動化:分類と不足通知をスクリプト/外部サービスで代替。
- 報告自動差し込み:Word/Excelのフォーマットに写真とキャプションを流し込む。
- 見直し:1現場ぶんの手戻り時間と撮り直し回数を数字で比較して更新。
すべてをAIにしない。人間の判断が必要なところだけを残し、
それ以外を機械的に合格させる。この線引きが成否を分ける。
経営目線:赤字を防ぎ、信頼を積むために
- 撮影・提出の標準化は、工期遅延と再訪コストを減らす。
- 上位会社は「初回で基準を満たす会社」を評価する。
- 下請けさんには迷いのない指示を出せるので、現場が平和になる。
- そして何より、小さい現場でも勝ちパターンが回るようになる。
まとめ:人を増やせなくても、仕組みで強くなる
AIは魔法ではない。けれど、教育と確認の“浪費時間”を削る道具としては強い。
私はアスベスト除去業をやめない。むしろAIに少しシフトしながら、本業を長く続けられる形に変えていく。
次は「工程写真チェックボット(最小版)」を動かし、一現場分の数字で効果を検証する。動いたら合格。そこから育てていけばいい。
参考リンク
- e-Gov|石綿障害予防規則(全文)
- 環境省|大気中へのアスベスト飛散防止対策(大気汚染防止法)
- 環境省|解体等に係る 石綿ばく露・飛散漏えい防止対策徹底マニュアル
- 厚生労働省|関係法令・マニュアル(総合入口)
- 国土交通省|建築物石綿含有建材調査マニュアル(PDF)
さらに詳しいリンク(自治体・届出・教育)
- 環境省|石綿事前調査結果の報告について
- 東京都環境局|事前調査結果の報告・届出(オンライン)
- 東京都環境局|解体・改修時の規制と手順(掲示・届出)
- 厚生労働省|石綿作業の特別教育・作業主任者(科目・時間・PDF)
- 厚生労働省(労働局)|改正石綿則のポイント(掲示・記録 等・PDF)
🔗関連記事
🧩前:クラウドワークス初心者注意!時給100円以下のDM案件を冷静に断った理由



コメント